再びこの記憶に苦しめられる日が来るとは思わなかった。遠くに追い払い、厳重に鍵をかけていたはずなのに……。ふとしたことで記憶が甦り、不安感で包まれる。
過去にされたこと、それに対しての自分の言動が一コマ一コマ明瞭に思い出され、今またわたしを苦しめる。
過去の辛い記憶はどこまでも追いかけてくるかもしれない。だけど逃げ続けている内に記憶は次第に薄れゆき、その威力は確実に弱まる。
逃げることが本意でなかったとしても、過去の亡霊からは逃げてもよいのではないだろうか。手の触れられないものには、なす術もない。
心の中の嵐が過ぎ去るまで、臆病なウサギのように安心で安全な巣穴にこもり、穏やかなその日の訪れを待とう。