わたしは知っている。
これが見せかけの幸せだということを。
わたしは母親が望む通り幸せな娘を演じ、自分の意志から目を背ける。
何も考えなければ、日々は何事もなく過ぎてゆく。
何も感じなければ、傷つくことも傷つけることもない。
わたしは母親の意のままに動くマリオネット。
心をもぎとられた空っぽのいれもの、それがわたし。
わたしは母親が理解できない。
そして、母親もわたしを理解できない。
わたしはそのことを知っている。
「無知の知」
ソクラテスが言っている。
知らないことを知らずにいることの方が罪深い、と。
ねえ、どうしたらわたしの言葉は届くの?
これまでに何度も期待して、そのたびに裏切られてきた。
それでもやっぱり期待してしまう。
心の中ではどうしようもなく反発しながらも離れることができない。
家族ってなに?
わたしには分からない。
頭をなでてほしかった。
抱きしめてほしかった。
褒めてほしかった。
わたしは、ずっと寂しかった。
一番近くて、一番遠い人。
それがあなたです。