デメテルの元にもうじき愛しい娘ペルセポネが戻ってくる。
冥界からの娘の帰還をお祝いする母の気持ちのあらわれのように、日を追うごとに木々の緑は濃くなり、そこかしこに淡い桃色の花が咲きこぼれる。
春は始まりの季節。
冬の間は固く縮こまっていた心が春の陽気に誘われて開放的になり、浮足立ってくる。
そして春のやわらかな日差しが、わたしの背中をそっと押す。
どこかに消えてしまっていた勇気ややる気がわたしに戻り、えいやっと飛び込んでみたくなる。
人として生まれた以上、わたしが生きた証を残したい。
春は人を哲学者にさせるのかもしれない。
わたしを愛する母親ですら、わたしの人生を歩むことはできない。
わたしの人生は、わたしだけのもの。
だから、自分が納得する人生を。